▼ご挨拶

ずっと昔のこと。目に見えないものに導かれるように、師を仰ぐでもなく、いくつかの本を参考にして焼き物作りを始めた。とても面白く思えたので、既製品の釉薬や灰などをたくさん買い集めて、いろいろな工夫をしてみたが、ある時ふと気がついた。

私の住んでいる伊豆大島といえば、まず椿の花に三原山。歌に踊りにとその独特な衣装で名高いアンコさんというイメージは根強い。

椿の島の、椿の原木から生産されるであろう、椿から生まれる椿灰を使って仕事がしてみたいと考えるのは至極当然の流れであった。

この伊豆大島においては、椿の木は保護・育成されるものということになっているので、選定や道路工事などで止む無く切る椿の枝を集める。

燃やして灰にすると活字に書けば簡単だが、始めから終わりまでを通すと工程の多い仕事である。

『椿の灰』という、他では手に入れることの難しい素材を扱うとなれば、ひょっとしたらいくらか人のお役にたてる、無くてはならない仕事かも知れないと思うこともある。

世の中には、どうしても昔ながらの自然の材料を、自分の製品に使いたいと考える人は多く、私の椿灰作りは、そんな人たちのお手伝いが少しでも出来ればと考えるものだ。